10・ビートルズは問題児だった?

今ではビートルズの歌やビートルズのことなどが教科書にものっていて、学校でも習うことができますが、お父さんたちの時代にはそんなことは絶対にあり得ないことでした。
ビートルズのような格好をしたり、ビートルズと同じようにロック・グループを作って演奏したりすることを禁止する学校がたくさんありました。

ビートルズが日本でコンサートを開いた時に、コンサートのチケットが手に入らなかったけど、一目でもいいからビートルズの顔を見たいと、ビートルズが泊まっているホテルに出かけた中学生や高校生がたくさんいました。そしてそうした中学生や高校生の多くが警察に補導されたのです。

なぜかと言うと、ビートルズは“問題児”だと思われていたからです。
これは正しい言い方ではありません。
大人からはビートルズは“問題児”だと思われていたのです。
だから“問題児”のコンサートに行くことや“問題児”の音楽を聴くのは“問題児の仲間”だと思われたのです。そうした理由から、“問題児”のつくっている音楽が学校の教科書にのるなんて事は絶対にあり得なかったのです。

じゃなぜビートルズは“問題児”だったのかを考えてみます。

  1. 髪の毛が長かった(長髪)
  2. 音楽の時の音が大きかった(うるさかった)
  3. エレキ・ギターを使っていた(エレキ・ギターは不良の道具)
  4. セクシーで女の子のファンが多かった(教育に悪い)
  5. 学校の成績はよくなかった
  6. よく学校をサボった
  7. 先生の言うことを聞かず、反抗的だった
今でも昔でも“不良”とか“問題児”とか呼ばれることの最大の原因は変わりません。それは「親や先生の言うことを聞かない」ことと「学校がきらいで勉強があまり好きではない」ことです。ビートルズも同じ理由から“問題児”でした。
でも天才エジソンも「学校がきらい」でしたし、アインシュタインも「学校の成績」は良くありませんでした。そう考えるとエジソンもアインシュタインも“問題児”だったのです。今でもアメリカの野球選手の中で最も人気があり、ヒーローでもあるベーブ・ルースという人も“不良”でした。

11.jpgベーブ・ルース

なんだか偉い人や天才的な人はみんな“不良”とか“問題児”のように思えてきます。“不良”とか“問題児”だと偉い人になれそうな気がしてしまいます。

でもお父さんはこう言います。
ビートルズが“問題児”と呼ばれたのには分けがあります。第一の理由は“大人たちの理解できないこと”をやっていたからです。ビートルズの音楽はベートーベンモーツアルトの様な古典的な音楽とはまったく違っていました。それが大人たちには理解できなかったのです。もう一つの理由は“学校では教えてくれないこと”を自分たちの力で考えて答えを出してしまう努力をしたことです。「1+1」はだれが考えて答えを出しても「2」です。だけど、「一度アンプを通して出したエレキ・ギターの音をもう一度マイクでひろったらどんな音楽ができるか」といったことは、学校では教えてくれないし、答えがありません。それ以上に答えは一つだけではないのです。大人はこうしたことを考える子供がきらいなのです。だから“不良”とか“問題児”とか呼ばれたのです。
それともう一つ、ビートルズが“問題児”だったことと、今の“暴走族”や“いじめ”とはまったく違うことがあります。
ビートルズも、ケンカをしたりタバコを吸ったりお酒を飲んだりしました。でも、人を傷つけたりケガをさせたり殺したりなどということはしませんでした。それにケンカにもルールがあること、一人の相手を集団でいじめたり、金属バットや鉄パイプで人をなぐったりということは、人間のするケンカのやり方ではないということを知っていました。
ケンカをするときは素手で一対一でやります。そうすると、自分の手も本当に痛いのです。あいてもなぐられて痛いのです。でもなぐった自分も痛いのです。だからあいての痛みもわかってくるのです。
一人の相手を大勢でやっつけるのは勝てるに決まっています。それに抵抗をしない人をいじめるのも同じです。だから勝つことがわかっているようなやり方ではケンカはしなかったのです。
こうした考え方というのは、前に書いた“人種差別”や“戦争”に反対したこととまったく同じことだと思います。
平和というのはケンカや争いが無いことではないのです。カンカがなくなれば一番いいのですが、そんなことは絶対にあり得ないとも思えます。だからケンカをするにもルールに乗っ取ってするということです。それに一人一人の人間が持っている“尊厳”を認めあってケンカをするという考え方です。だから一対一で素手でケンカをするのです。
集団で一人の人間をいじめるのは、ビートルズを“不良”とか“問題児”とか決めつけた大人たちのやり方と同じです。だからそうしたことが大嫌いだったのです。
一人の人間を集団でいじめると、だれがやったのか分からなくなります。「ぼくもやったけどみんなもやったよ」と言うことになります。これを「匿名性」と言うのだそうです。こうした「匿名性」に隠れてケンカやいじめをするのは弱い人間のすることです。
ビートルズはそういう人間が大嫌いだったのです。
だからいつも正々堂々と自分たち一人一人の意見を自信をもって発言しました。四人がそれぞれ別々の言い方をすることもありました。でもそれが個人を尊重することなので、ケンカは起きませんでした。意見が違うことは当たり前のことなので、それを話し合いで解決していく、そして新しい曲をつくっていったのです。

ビートルズが“不良”とか“問題児”とか呼ばれながら、ぼくたちに教えてくれていることは、とても大きなことだと思います。

ビートルズの解散の原因は、四人の仲違いだとも言われています。そうすると、今書いてきたこととは矛盾すると言われてしまいそうです。
この事については、もっと調べなければいけないのでここでは書きません。でもグループが解散したのはケンカして離れ離れになったわけではありません。確かにそれと似たことはあったそうです。でもそれは意見の対立であって、ケンカではないのです。

ぼくはまだ小学生なので理解できないことがたくさんあります。その中の一つに「大人になる」ということがどう言うことなのかがあります。ビートルズの解散について正しく理解できるようになることは、きっと大人になることだと思います。

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