9・ビートルズの活躍した時代

現代は世紀末を迎えて、とくに今年は「神戸大震災」やら「オウム真理教事件」やら物騒なことがたくさん起きています。
21世紀まであと6年……そうしたことの意味は今はよく分かりませんが、ぼくたちは何か大変な時を過ごしているようです。
お父さんに言わせると、世紀の変わり目を経験できることはとても貴重なことだそうです。
いま日本の平均寿命は男女とも60歳をこえています。けれど2001年つまり21世紀に入ってすぐに生まれた人が次の22世紀を経験できる確率はとても少ないと言えます。
20世紀の始めに生まれた人は、平均寿命が今よりももっと短かったので21世紀を経験できる人の数は非常に少ないと言えます。それに、20世紀には二度の大きな戦争(第一次、第二次世界大戦)があってとてもたくさんの人が戦争の犠牲になって死んでいます。だから、戦争がなければ21世紀を迎えられた人でも、戦争のためにそれがかなわなくなった人が本当にたくさんいるのです。
そればかりではありません、今現在でも世界中を見まわしてみると、ぼくたちと同じくらいの年齢の子供が、餓えや病気のためにたくさん犠牲になっているのです。それに戦争もまだ無くなったわけではありません。

戦争や餓えや病気が無くなったと言われる日本でも、交通事故やサリン事件のような事でいつ命を落とすかも知れません。そうしたことを考えると、世紀の変わり目を経験できるというのはとても貴重なことだという意味が、少しはわかってきます。

今は20世紀。20世紀は1901年1月1日から始まって2000年の12月31日で終わります。
ビートルズが活躍したのは、1963年から1970年の間のわずか8年足らずでした。この時代は“60年代”と呼ばれています。

前にも書きましたが、ビートルズのメンバーが生まれたときには、日本を始め世界中を巻き込んだ戦争をしていた時代でした。この戦争は1945(昭和20)年8月15日に日本が降伏することで終わりました。

こうして考えると、20世紀の前半は「戦争の時代」でした。戦争が終わるとすぐに平和な世界になったかというとそうではありませんでした。20世紀の後半の大部分は「冷戦の時代」と呼ばれて、ついこの間まではアメリカ合州国ソビエト連邦という二つの国が対立関係にあったのです。
国の名前で言うとアメリカ合州国とソビエト連邦、略してアメリカとソ連なのですが、この「冷戦」というのは国と国とが戦争をするのではなくて、考え方の違いによるグループの対立と言った方が分かりやすいと思います。
アメリカを中心とする「資本主義に基づく自由な国をつくる」という目標をかかげたグループと、ソ連を中心とする「共産主義・社会主義に基づく自由な国をつくる」と言うグループが、実際に戦争をしないのだけれど、色々な場面で対立して仲良くしなかった、と言うことなのです。
ビートルズはこうした「冷戦」の時代に、世界中から支持を受けた、世界中の若者に愛されたグループでした。
ビートルズの活躍した時代は「若者の時代」でもありました。「若者の時代」というと“若い人達が大いに活躍した時代”と思うかも知れません。でも実際は、その当時の若者達とその当時の大人達との対立の時代でもあったのです。
その当時の若い人達というのは、ビートルズと同じように戦争中に生まれたり、戦争が終わってから生まれたりして、戦争そのものを知らない・覚えていない人達です。こうした人達のことを「戦争を知らない子供達」と呼んだそうです。
反対にその当時の大人達というのは「戦争を知っている子供達」で、生まれてから物心がついて大人になっていくまでの間ずっと、戦争をしている世の中で生きて来た人達です。実際に戦場に行って戦った人や戦争を推進した人達でもありました。
ビートルズが活躍した「60年代」は、こうした「新しい若者」による「新しい価値観」があらわれた時代でもありました。
それともう一つ、ビートルズが活躍した時代は、まだ「人種差別」が存在していて、この「人種差別」を取りやめようとする運動が若者を中心として起こった時代でもありました。
「人種差別」と言うのは、今問題になっている学校での“いじめ”とよく似ています。“いじめ”を国をあげて、時には法律を作って推し進めようとするのが人種差別です。つい最近まで、南アフリカ共和国ではこの人種差別を正しいとする法律で国を運営していました。
具体的に言うと、法律によって白人と黒人とが住める場所が区別されていたり、白人と黒人との結婚が禁止されていたり、勉強する学校も白人用と黒人用とがあったり、黒人には参政権がなかったりしたのです。生まれた国や地域や肌の色の違いなどによって人を差別する、それ以上に“人間として認めない”と言うのが人種差別です。ビートルズの活躍した時代には、まだこうした人種差別が残っていたのです。
ビートルズはこのどれに対しても大きな影響を与えました。それは歌を通じてですが……そしてお父さんたちは、そのビートルズの歌を通じて色々なことを学んだのでそうです。
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